イベント名  第191回 泉ヶ岳雪上観察会  主催  自然観察指導員連絡会みやぎ        
開催日  2019年2月17日  開催地  宮城県仙台市  参加料  300円
公開自然観察会ルート図
  公開自然観察会のルート図です。わずか1.6kmの距離でしたが、見所の多い観察会でした。
 冬の観察会で見るものがあるのだろうか?と、個人的には全く期待しておりませんでした。
 しかし、配られた写真付きのパンフレットを見ると、冬は自然観察入門のベストシーズン!?。

  果たしてどんな風景、どんな生き物たちに出会えるのでしょうか?ワクワクしてきました。
泉ヶ岳雪上観察会の様子。森に入る前に、カンジキを履きました。色々な種類のカンジキがありました。
  当日の朝は軽く吹雪いており、視界もあまりよくありませんでしたが、大駐車場は6割ほど
 埋まっておりました。見ているとスキーヤーばかりでなく、ザックを背負った方も大勢おりました。
 そして次々と登山口に消えていきます。こんな日に登れるのだろうか?と心配になりました。

  宮城県では去年、登山中に8名の方が亡くなっております。
 皆さん無事で帰ってくださいと、祈らずにはいられませんでした。

  観察会が始まる9:30頃には雪も止み、風も吹いていない絶好のコンディションになりました。
 50cmほど雪が積もっておりましたが、カンジキ無しでもなんとか歩けそうな感じはします。

  カンジキは無料で貸し出しもされており、写真一番右のカンジキが貸出用です。
 藤製の趣あるタイプ(写真中央)や写真左の最新式のカンジキを持参する方もいました。
 カンジキではなく、歩くスキーで参加された方もいました。

  私は長靴のままで歩いてみる事に・・・少し不安はありますが・・・どうなりますやら。
泉ヶ岳雪上観察会 鵜松明樺の根明けの様子 根明けの正式名称は?きれいに穴ができるわけは?ガイドさんの解説で勉強しました。
  まずはクイズです。
 この写真のように木の根元の雪が輪になって溶けた状態を何と言いますか?
 こんな感じで観察会は始まりました。

  ただ見ているだけでは、ネイチャー・ウォッチングとは言えない。
 科学的に見てみましょう!という感じで、今まで見たことがないタイプのガイドさんです。
 理科の教師をしていたという事で納得です。

  もともと、この現象に正式名称は無かったそうです。
 15年ほど前に短歌で根明けと詠まれた事から、根明け、根開きと言われるようになったのでは
 と言っておりました。では、なぜこのような現象が起きるのでしょうか?

 (補足)正式名称がない事は、本当だと思います。根回り穴という方もいます。
 ニュースなどでは、根開きを使う事が多いようです。
 
泉ヶ岳雪上観察会 根明けを科学的に解明する。レーザー光温度計で、雪面や木々の温度を検温しました。
  この現象が起きる原因は、いくつかの説が唱えられているようです。
 ①春になり、芽吹き始めると吸水も盛んになり、樹木の温度も上昇する為。
  では、枯れ木や電信柱にも似たような現象が起きるわけは?

 ②樹皮の色が黒く、太陽光を吸熱する為。
  では、色の白い白樺や太陽光の当たらない北側でも起きるわけは?

 ③木にぶつかった風が巻き上げる為。ベルヌーイの法則。
  では、風向きで形に変化がないのは、なぜでしょう?

 ④雨が木の幹を流れ、根元の雪を溶かした為。樹幹流。
 
 ⑤ガイドさんの説としては、太陽光の電磁波が木に当たり、遠赤外線を出すためではないか。

  その後、レーザー光温度計で検温してみました。
 雪面の温度は0℃で、この木の温度は3℃でした。他の木も調べましたが、3~8℃の間です。

  一つの要因だけではなく、複合してあのように綺麗な穴が出来るのだと思います。

  ちょっと残念だったのは、検温し忘れた場所がありました。
 雪を掘って、根元の温度を調べたかった。同じ木でも場所によって違いはあるのか?
 これを提案すればよかった。もしかすると、根の部分だけ温度が高いという事があるかも・・・。
泉ヶ岳雪上観察会 野蚕を探そう!という事で見回すと、スカスカが特徴のクスサンの繭(スカシダワラ)が見つかりました。
  続いて、野蚕を探してみよう!木の枝に何かぶら下がっていませんか?
 という事で発見したのが、写真のスカシダワラです。クスサンという大型の蛾の繭で、秋に羽化
 し、越冬は卵でします。幼虫は8cm近い大型の毛虫で、栗の葉など食べる害虫ですが、
 昔は釣り糸作りに用いられ、酢につけると固まる性質を利用して太さなどを調整したそうです。

  今回はスカシダワラだけでしたが、ヤママユガやウスタビガ・イラガの繭もあるそうです。
 特にヤママユガの緑色の繭は、高級素材として人気があるとか。
 羽化は夏から秋にかけて行われるので、繭自体は早い時期からありますが、葉が落ちた冬が
 一番見つけやすいとの事でした。
泉ヶ岳雪上観察会 雪面には動物の足跡が残されていた。雪が被っていたので、何の動物の足跡なのかは判明せず。
  雪原は、アニマルトラッキングにも最高のようです。
 すぐに見つけられたのが、この足跡です。雪を被っていたので、動物名は判りませんでした。
 他にもT字型で特徴のある野兎の足跡などを発見する事ができました。

  足跡を辿れば、ウンチや木につけられた引掻き傷なども容易に発見できそう。
 歩幅などから、歩いている、他の動物から逃げているなども判るそうです。
泉ヶ岳雪上観察会 ミズメの木を傷つけたのは、誰だ!熊ではなく、人でした。サロメチールの匂いを嗅ぐためだそうです。
  今回、ガイドさんが怒りを露わにしていたのが、このミズメと後ほど紹介するヤドリギでした。
 さて、この傷はどんな動物が付けたものでしょうか?というようなクイズが出されました。

  もしかして熊!?と私は思ったのですが、実際は人間でした。
 このミズメの木は、サロンパスなどに使われるサロメチールの匂いがするそうです。
 その匂いを確認させるために、樹を傷つけて匂いを嗅がせるガイドがいるそうです。
 言語道断、本当に怒っておられました。絶対に止めましょう!

  このミズメの木は梓とも言われ、固くしなる事から弓の材料に用いられたそうです。
泉ヶ岳雪上観察会 ヤドリギは、冬に実をつけるという事を知りました。キレンジャクという渡り鳥の餌になるそうです。
  少し見えにくいですが、写真中央の木にある鳥の巣のような感じのものがヤドリギです。
 ミズメ同様に怒っていたのは、観察しやすい低い枝に生えていた見事なヤドリギを、誰かが
 採ってしまったからです。ヤドリギは、何百年も長生きする植物だと言っておりました。

  今回は、双眼鏡で実の観察をしました。黄色い小さな実を見つける事ができました。
 もともとは透明な色をしており、熟すと黄色くなるもの。赤くなるものの2種類があるそうです。

  ヤドリギは、宿主の木の葉が落ちて、光合成がしやすくなる季節に花と実をつけます。
 その為に冬にカムチャッカから渡ってくるキレンジャクという雀に似た鳥の恰好の餌になる。
 だから、この場所で辛抱強く待てば、キレンジャクを見れますよという事でした。
泉ヶ岳雪上観察会 雪渓カワゲラが必死に上流を目指して歩いていました。産卵をし、下流で育ち、また産卵の為に上流を目指す。鮭のような虫でした。
  植物ばかりではなく、冬に活動する虫もいました。雪渓カワゲラです。
 わずか1cmほどの虫でしたが、必死に歩いております。
 ガイドさん曰く、この虫は沢沿いの雪の上を必ず上流に向かって歩くとの事でした。
 上流で産卵し、下流で育ち、また上流に戻ってくるという鮭のようなライフサイクルの虫でした。

  寒さに強いが暑さには極端に弱く、観察するときは雪の上でしてくださいとのことです。
 手のひらの体温でも死んでしまうそうです。
泉ヶ岳雪上観察会 貝殻タケ?木材腐朽菌は、冬でもせっせと森のお掃除です。
  キノコを得意とする二人のガイドさんの意見が分かれたのが、写真のキノコです。

  冬の森知れば宝石の山!冬のキノコを発見しようという事で、キノコを探すとほどなく発見!
 何が宝石の山なのだろうとワクワクしましたが、ちょっと意味が判らず・・・。
 今でも何の事だったのだろうと、少し困惑気味です。(笑)

  キノコの名前も、貝殻タケ、いや違う種類のようだと意見が分かれました。
 触ってみると、たしかに貝殻のような硬くスベスベした感じがしましたが・・・。
 どちらでも食べられないそうなので、私にとってはどうでもいいのですが(笑)
 木材腐朽菌と言って、樹を朽ちさせる森のお掃除屋さんという事は判りました。
泉ヶ岳雪上観察会 もとはススキ草原だった場所に、先駆植物のハリエンジュが生えていました。
  この場所は、植生遷移の見本林だそうです。もともとは、地域の萱場でした。
 昔のように茅葺屋根の材料や家畜の餌としての利用価値が無くなってしまい、刈り取りや
 火入れなどの手入れが行われなくなったために先駆植物が生えてきているのだそうです。

  この場所では、先駆植物の中でもハリエンジュ(ニセアカシア)の木が多く生えておりました。
 現在では要注意外来植物に指定されておりますが、北海道の開拓では重宝されたそうです。
 ①花や若芽が食用になる。(注)樹皮や葉・実などは毒性がある。
 ②根粒菌を持っており、痩せた土壌でも育ち、土壌も肥やしてくれる。
 ③根をしっかり張るので、土留めや砂防などに利用できる。
 ④湿気っていても燃える為、薪材としての価値も高い。
 ⑤木材としても耐久性が高く、線路の枕木や床材など利用価値が高い。
 ⑥蜂蜜を採る蜜源植物として利用されている。

 いい事尽くめの木のようですが、現在は伐採や除草剤を使った駆除が行われているそうです。
泉ヶ岳雪上観察会 熊ガンガンと山椒の木 ガンガン叩いて、熊ちゃんに知らせる。人が通りますよ!
  地図に熊ガンガン左折とありました。何の事かな?と思ったら、黒枠内の事(笑)なるほどね。
 ここでガイドさんが、この熊ガンガンが吊るされている木は、何の木でしょう?とクイズを出題。
 ヒントは、名前を言ったら驚きますよとの事です。・・・全く想像できない・・・

  答えは、山椒の木でした。( ゚Д゚)マジカー と思ったら、食べられる山椒ではなく、
 食べられない種類の山椒だそうです。それにしても見事な大木ですね。^^
泉ヶ岳雪上観察会 榎と翌檜の植樹林 榎は、蝶や昆虫の餌や住処になります。
  13:00を過ぎて、一旦ここで昼食を取ることに・・・ 敷物を持ってこなかったのは失敗だった。
 昼食後に、この場所の説明がありました。

  見づらいのですが、写真左の枝だけ見えている木が榎です。蝶の餌として植えたそうです。
 蝶の名前を忘れてしまったので調べてみると、オオムラサキをはじめ、沢山の蝶や昆虫の
 餌や住処になる木でした。
 江戸時代には街道の一里塚に植えられたとの事。私は松か杉を植えていたと思っていました。
 調べてみると、確かに松や杉も植えられていたようですが、合わせても三割強程度でした。
 榎が一番多く植えられており、過半数を占めていたようです。
 榎は枝が横に伸びるために木陰を作りやすく、根が塚の土留めの役割を果たしていました。
 この三種以外に、桜や栗なども植えられた場所もあるようですが、極少数と書かれていました。

  錐型に見える木が翌檜です。クリスマスツリーのように見えますね^^
 高度成長時代に、庭に翌檜を植える事を憧れたと言うような説明をガイドさんがしていました。
 その理由は調べてみましたが、判りませんでした。('ω')

  ヒノキチオールという成分が含まれており、殺菌力と防湿性に極めて優れており、檜風呂や
 まな板の材料として用いられるそうです。
 檜風呂じゃなくて、翌檜風呂だったのね^^

  また檜と一緒に植えると檜を枯らすほどのアレロパシーがあるそうです。
 ハリエンジュ(ニセアカシア)もそうでしたが、アレロパシー効果で他の植物の成長を阻害する
 植物が多い事に驚きました。
泉ヶ岳雪上観察会 初参加の観察会でしたが、とても楽しいひと時を過ごせました。感激の筆者。
  カンジキを履いて、雪の上を歩くだけで楽しそうと思って参加したのですが、
 知識の豊富なガイドさんの話に引き込まれ、わずか1.6kmの距離の観察に4時間30分も
 かかりましたが、あっという間の楽しい時間でした。本当に参加して良かったと思います。
泉ヶ岳雪上観察会 時折小雪がぱらつく位で、風もなく絶好の観察日和でした。
  自然観察指導員連絡会みやぎでは、公開自然観察会を年数回ほど開催しているそうです。
 料金もお手頃ですし、これから流行りそうな感じがします。
 知識豊富なガイドさんと宮城県の豊かな自然に触れてみませんか?
 募集は新聞上でしているそうです。私もまた参加したいと思っております。

 最後までご覧いただき、ありがとうございました。(*'ω'*)
inserted by FC2 system