|
捜索手順その1 行方不明者の居場所を推理する。
|
|
私の捜索は、行方不明者の居場所を推理する事から始まります。
今回判っている情報は、3つでした。
1.前和田付近の田んぼの中で車が見つかっている事。
2.お母様は、尾浜で見つかっている事。
(注)実際は、尾浜の北側にある外洋に面した砂浜で発見されていたそうです。
3.車に同乗していた足の不自由な息子さんが行方不明になっている事。
以上の三点から、行方不明者の居場所を推理していきたいと思います。
山岳遭難の場合は、国土地理院の地形図がメイン、航空写真をサブで使用しますが、
今回は航空写真をメインで使用したいと思います。水の流れが良く判るからです。
現場付近の航空写真を見ると、ⒶⒷの2つの河川が堤防で仕切られており、
下流の流れもかなり異なっている事が判りました。
まず、どのへんで流されたのかを推理します。
道路の高低差から、ⓒ付近で流された可能性が極めて高いと思いました。
ⓒ付近の流れはⒶと①付近で合流する可能性が高い。
澪のでき方から流れを分析していくと、①の流れは北西に向かう②と北進する③の
二つの流れに分かれる事が判る。そして、②の流れは、④のようなVターンをし、
東に流れを変える。
③④の二つの流れが合流する黄色丸付近にある尾浜で、お母様が発見された
事に矛盾はないと思われた。
また、一緒に流されている事を考えると、この黄色丸付近で見つかる可能性が
高いのではないかと思われた。
|
|
捜索手順その2 捜索エリアの決定
|
|
捜索手順その1で、黄色丸内にいる可能性が高いと思われたが、
捜索には、ヘリコプターやボートも動員されている事から、装備を持たない私が、
そのエリアを捜索する意味は薄いと思われた。
では、どのエリアを捜索すべきかという事になりますが、
ヘリやボートからも死角になる部分が多い、重点赤丸内を捜索する事にしました。
ここは、木が邪魔になってヘリコプターから見えない場所も多いと思われたし、
水が引いた後ではボートでは容易に近づけない場所に思われた為です。
時間が余った場合は、予備Ⓐ・予備Ⓑの順番に捜索する事にしました。
|
|
全く捜索しない範囲として、青丸Ⓓを設定しました。
澪が無いので、ここまで潮の流れが効かないと思った為です。
青丸Ⓔには、逆流の発生する時にしか流されないと思われた為、
可能性はかなり低いと思いました。
|
|
捜索その1 重点捜索エリア
|
|
まず①に向かい、入江内の潮の流れ具合や対岸を単眼鏡で確認しました。
次に★に向かい、川の流れ方やゴミの着き方を確認後、神社に参拝してから、
②の周辺を捜索する事にしました。
★周辺のゴミの着き方が低い場合は、②周辺の捜索を省略する事にしていました。
水が流れなければ、当然あの位置に流れ着くはずが無い為です。
それでは、個別に見ていきましょう。
|
|
こちらが①から↗の方向を写した写真になります。
船溜まりになっており、漁師さんがいたので話しかけたのですが、
生来の口下手のせいで大した情報は引き出せませんでした。
単眼鏡で周辺の捜索をしたのですが、ゴミも少なく、潮の流れも小さい
気がしました。この入江内に流れ着く可能性は低そうな気がしました。
|
|
こちらが②から↙の方向を写した写真になります。
中央奥の田んぼには、捜索中の自衛隊の姿が小さくですが写っています。
更に右側の岬のように突き出た部分の先に、行方不明者の車があります。
ゴミはかなり広範囲に堆積しており、一番厚く堆積した場所で50cmほどでした。
また、崖や斜面の汚れ方を見ると、約1.8mの高さまで水位は上昇したようです。
こちらは全く捜索された跡がありませんでしたが、田んぼの捜索を終えた
自衛隊の皆さんがこちらに来て捜索していただけたので、
あっという間に確認が終わりました。
私の捜索は、水際となった場所やゴミだまりだけでなく、
崖以外の斜面の中腹、なだらかな場所では更に上まで捜索しましたが、
全く成果はありませんでした。
この周辺は用水路が張り巡らされており、用水路内も捜索しております。
反対側の入江も同じように捜索し、この重点エリアの捜索を終えました。
|
|
捜索その2 予備Ⓐ周辺
|
|
続いて、予備Ⓐのエリアの捜索に移ります。
鵜の尾岬は高台になっており、ここから単眼鏡で捜索する予定です。
ヘリコプターは捜索で大活躍しますが、高台から単眼鏡で捜索する場合にも
同じように高い捜索効果が期待できます。
クエスチョンマークは、お母様はこの辺に流れ着いたと想定していた場所です。
実際に流れ着いていた場所は、外洋側の砂浜だったそうです。
報道の地名からでは、場所を勘違いしてしまう事が良くあります。
この外洋側の砂浜は、私の予想では流れ着く可能性はほとんどないと思った場所でした。
|
|
こちらが、鵜の尾岬から下の海岸を写した写真になります。
どんどん移動しながら、単眼鏡を使って確認していきました。
ほとんど死角になる部分もなく、海岸線ばかりでなく、
海上もしっかりと捜索できました。
成果はなかったものの、かなりの範囲を確認できました。
下の海岸では、捜索隊による捜索も行われていました。
|
|
捜索その3 予備Ⓑエリア周辺
|
|
予備Ⓑエリアは、潮流を考えても漂着する可能性は極めて低いと思われました。
しかし、私が捜索できる最後の範囲になります。
帰りの時間を考えると、捜索に宛てられる時間は90分程度です。
小走りでゴミの漂着している場所を中心にした捜索になりました。
|
|
|
砂州から写した松川浦と漂着ゴミの様子です。
立杭の後に出来る波からも、かなり速い流れをお分かりいただけると思います。
流れが速い為に、漂着ゴミがある場所は少ない感じがしました。
|
|
こちらが太平洋側を写した写真になります。
この日は波が強く、消波ブロックにぶつかっては激しい波しぶきを
あげていました。
時間が無かった為に、こちら側はざっくりと確認して終了となりました。
|
|
発見のニュース記事
|
|
私は、たった一日だけの捜索でしたが、とても考えさせられる遭難でした。
捜索にあたられた皆様に深い感謝と、この豪雨被害で被災された皆様に
心よりお見舞い申し上げます。
|
|