9月26-27日、11月13-16日に行った捜索や検証について
感じたことをつらつらと書いてみます。

道志村地形図

  道志村のオートキャンプ場で幼い女の子が行方不明になったというニュースを聞き、すぐに地形図を開いた。
 地形図を見た感想は、道迷いの可能性は低く、滑落死している可能性が高いというのが率直な気持ちだった。
 ただ滑落死にしても範囲が狭いので、すぐに見つかるだろうと思っていました。

  一日経ち、二日経ち、ついには自衛隊に出動要請が出されました。
 ワイドショーでも連日報道されており、識者が子供の心理や習性などを考慮した見解をコメントしておりました。

道志村地形図拡大版

  上の地図は、オートキャンプ場周辺を拡大した地形図に主要な場所を書き込んだものです。
 道志村に向かった時は、オートキャンプ場や一番上の水遊び場・テントの位置だけが判っていました。
 この地形図から判る一番重要な事は、行動できる範囲です。
 見る限り、かなり狭い・・・もし少女が道に迷い彷徨っていたとしても、すぐに発見されるでしょう。
 滑落しそうな場所も一つしかなく、黄色い〇印の付けた堰堤の脇くらいです。

  この立地条件でおきた行方不明なのに、捜索隊が発見できない?とても信じられない気持ちの方が強かった。
 そして、目撃証言が一つもないという不可思議。
 最後に母親が見送った場所から進むと、どこに向かっても人がいそうなのに、なぜ目撃情報が無い!?
 狭い範囲なのに、一体なぜなのだろう?謎は深まるばかりです。

  この行方不明を解く条件
  1.目撃情報が無い。どのように歩けば、そのような状況が作れる可能性があるのか?
  2.キャンプ場周辺の捜索がしっかりされている。見つからない理由は何か?

  出発前に想定した、この少女に起きた可能性は、次の5通りでした。

  1.人のいない山奥に迷い込んだ。(地形図を見る限り、最も可能性が低いと感じた。)
  2.友達を探す為に崖を覗き込み、滑落即死した。岩や木の根の隙間などで発見されにくい形で亡くなっている。
  3.かくれんぼ、あるいは何かを落としたり・見つけた為に、導管や側溝のような所に潜り込んで出てこれなくなった。
  4.誘拐拉致されてしまった。
  5.椿沢で流されて、道志川で更に下流まで運ばれた。または、沢の途中にある取水口に吸いこまれた。

  現地では、この5つの可能性を一つ一つ潰していく事になる。真実にはたどり着けるのだろうか?

自衛隊車両と付近の山々

  9月25日深夜まで業務をこなし、ニュースを見て発見されていないことを確認してから、仙台を出発した。
 現場到着が朝6時すぎ、駐車場にとまる自衛隊車両を見た時に、やはり現実なんだと心が震えた。
 朝日に照らされた山並みは、地形図から想像した通りだった。
 ほぼ道迷いの可能性なく、滑落・土管などに入り込み出れなくなった・誘拐拉致の可能性しか残っていないと思った。

  まず駐車できる場所を探さなくては、・・・。「有料でもいいので、どこかに駐車できませんか?」と尋ねると、
 「オートキャンプ場を解放しているので、そちらに止めてください」との事だった。

 
オートキャンプ場地図1

  オートキャンプ場では、下記の順番で検証した。
 1.美咲ちゃんが最後に目撃された場所の確認。
 2.お姉ちゃん達が遊んでいた水辺の確認。水深は、10-50cmほどで流れも緩やかでした。(動画参照)
 3.キャンプ場通路の確認。緩やかな斜面に造られたキャンプサイトは、段々畑のような構造になっていました。

  ここで素朴な疑問が湧き上がった。なぜ、美咲ちゃんはお姉ちゃん達と合流できなかったのか?
 お姉ちゃん達が水辺で遊んでいると知って追いかけていたなら、たとえ道に迷ったとしても合流できたのではないか?
 というのは、遊べる水辺(水辺に降りれる道がある場所、他は崖や悪路)は、椿沢では三ヶ所だけになります。

  しかも地図で見ると結構離れているように感じる水遊び場ですが、実際には幅5m、長さ200mの範囲内に収まる。
 両端の水遊び場の奥に道は無く、それ以上進む事はありえない。本当に狭い範囲なのに・・・なぜ?

  この時点で、美咲ちゃんは何か勘違いして水遊び場以外の別の場所を目指していた可能性が出てきた。
 では、どのようなルートが考えられるのか?すべてのルートを歩いてみる事にした。

 
オートキャンプ場地図2

  美咲ちゃんは、どこを目指していたのだろうか?考えられるルートは、下記の6つになります。

 ①水遊び場に向かうルート ここを通っていたら、合流できた可能性が高く、目撃情報もあったはず。
  主な目的地:椿二の橋下流にある椿沢の2つの水遊び場 お姉ちゃん達が遊んでいた水辺もある。

 ②広場から上流の水遊び場に向かうルート このルートを使わずとも、テントから水辺までショートカットルートあり。
  主な目的地:椿二の橋上流にある椿沢の水遊び場

 ③道路を通り、村の中心部に向かうルート ポツンポツンと数軒の住宅があり、途中によく吠える犬がいる。
  主な目的地:道志川の水辺がある別のキャンプ場に行く事が出来る。(直線距離で450m、最短で700m位)
 (注)本当によく吠える犬で、とてもうるさい。行方不明頃には鳴いていないから、女の子は通っていないのではと証言。

 ④舗装されていない小道がある。(人幅程度) 住宅左側のすぐ横を通り、上流の橋の袂に出る。
  主な目的地:上流の橋に向かうショートカットコース、キャンプ場の裏山に行ける。
 (注)行方不明になった頃、農作業をしていた人がいて、子供は通っていないと証言。

 ⑤舗装されていない小道がある。(人幅程度) 椿沢のすぐ横を通り、お姉ちゃん達のいる水辺を見下ろす。
  主な目的地:空き地?
 (注)もしかすると、低身長だと下が見えない可能性はある。崖から落ちても致命傷にはならない気がする。
 (注)奥まで進むと、獣害防止用柵にぶつかる。急斜面を柵につかまりながら降りると、空き地に出る。

 ⑥住宅から少し離れた右側を通る林道。一部舗装された車も通れる林道で、崖にはガードレールもある。
  主な目的地:④と橋で交わる為、目的地はほぼ同じ。
 (注)私が滑落するなら、この場所だろうと推測した場所に向かうルートになります。

  この6つのルートのチェック後の感想は、なんて不可思議な行方不明なのだろうというものでした。
 先に想定していた5つの可能性がどれも当てはまりそうにない。

  1.人のいない山奥に迷い込んだ。(地形図を見る限り、最も可能性が低いと感じた。)
  調査後の感想:可能性は、かなり低いと思いました。
  理由はとても簡単で、迷い込めるようなスペースがほとんど無い為です。

 ほぼ並行に走る2つの尾根で区切られた狭い土地、かつ尾根が崖・急傾斜で構成されており、行動範囲が狭い。
 杉林なので見通しが利く、もし迷い込んでいたとしたら、むしろ容易に発見されていると思います。


  2.友達を探す為に崖を覗き込み、滑落即死した。岩や木の根の隙間などで発見されにくい形で亡くなっている。
  調査後の感想:崖や急斜面の多い地域になりますが、ガードレールがあったり、落ちにくい感じの場所でした。
  可能性のある場所は、わずかに2つでした。
  事前に予想していた堰堤付近は、下降して調査しておりませんので可能性は残っていると思います。
  もう一つは、お姉ちゃん達が遊んでいた水遊び場の横を通る崖上にある小道から落ちた場合になります。
  それほど高くもないし、落ちたとしても問題はなさそうには思いました。


  3.かくれんぼ、あるいは何かを落としたり・見つけた為に、導管や側溝のような所に潜り込んで出てこれなくなった。
  調査後の感想:付近を調査して回った感じでは、該当しそうな場所を見つける事が出来ませんでした。
  しかし、この可能性を排除する事は出来ないと思います。


  4.誘拐拉致されてしまった。第三者が関与する行方不明の場合
  調査後の感想:かなり難しいのではと思いました。
  理由は、どこに駐車したら犯行が可能か?という事を考えた時に、該当しそうな場所がありませんでした。

  この誘拐拉致説を成立させる犯人像があるとしたら、次の仮説しかないと思います。

  A. 地元住民説:たまたま家の近くに迷って来た子供を拉致してしまった場合。

  B. 交通事故説:付近を車で走行中に子供をはねてしまい、証拠隠滅の為に他で遺棄した場合。
    (注)この場合、飲酒運転や薬物を利用していた可能性が高いと思う。
    通りがかり説:付近を車で走行中に、一人で歩いている子供を思わず拉致してしまった場合。

  C. ソロか単独グループだけが利用していたキャンプ場に迷い込んでしまい、そこで拉致された場合。

  この立地条件の場所で誘拐拉致仮説を成立させるためには、下記の条件が必須になると思われる。
  ①車あるいは家などのしっかりした密室を持っている人物である事。
  ②車を利用している人物の場合は、走行中である、あるいはひと気のない駐車場に駐車していた人物。

  動機となるものは、下記の条件だけだと思います。
  ①性的な対象としての拉致
  ②何か見られてはいけないものを見られてしまった場合の口封じ
  ③死亡事故を起こしてしまい、証拠隠滅。

  この中でも、もし拉致事件だったとしたら動機で有力なのは②だと思います。

  この場合、死体を遺棄するのは、比較的近くではないかと思われます。
  いずれにしても413号線を通り、人家の消えたあたりで遺棄しているのではないかと思われる。


  5.椿沢で流されて、道志川で更に下流まで運ばれた。または、沢の途中にある取水口に吸いこまれた。
  調査後の感想:椿沢で流される可能性は、少ないのではないかと思いました。
  取水口のようなものに吸い込まれた可能性も考えましたが、それ自体を発見できませんでした。

  また、別の場所に向かった可能性が高い事もあり、他に水辺がないかと探したところ、道志川沿いにありました。
  行方不明になった場所から700-1,000mほどの距離でもあり、十分に行ける可能性が高いと思いました。
  (注)距離に幅があるのは、通った道によって距離が変わる為です。
  道志川は流れが強く、子供では簡単に流されてしまうと思います。
  (注)後日、捜索隊により、7km下流にある道志ダムまで捜索されたが発見に至らなかった。


  以上が今回の主な調査報告になります。個別なエリアの調査報告は、目次や動画よりご覧ください。

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