男子高校生の行動分析 彼はどこにいる可能性が高いのか? 

行方不明の高校生がいると思われる場所を書き込んだ地形図

 家出などの失踪ではなく、恵山周辺で遭難したと仮定した場合。
 【結論】行方不明者の高校生が見つかる可能性が高いと確信している場所は、
 地形図内に赤丸をしたポイントになります。

 なぜそのような結論に至ったのかを、一つ一つ検証していきたいと思います。
 そして、その場所はどのような場所なのか?なぜ発見されないのか?

  実際の現地調査もこの順番で行っております。



検証1 地形図から遭難の可能性を探る
遭難を調査してきた経験から、地形図を見ると判ることがあります。
どのような遭難パターンの可能性が高い、あるいは低いのか。
では、恵山の地形図を見てみましょう。

地形図を見て想定される遭難場所を地形図に書き込んだ物

  出発前にまず行ったのが、この地形図からの遭難場所の特定です。
  山岳遭難を調査してきた私の経験から、恵山の地形から起こりうる行方不明になる
 場合の遭難のパターンは次の3つです。

  ①ポジション取り滑落遭難:該当箇所は黒い矢印で示したABCの3箇所になります。
  ポジション取りとは、写真の構図を決めようとして、あるいは景色を楽しむためや
  じっくり見ようと思ってなど、登山道の端や外れた場所で立ち位置や姿勢を変える事です。

   この遭難が起きる場所には、明瞭な特徴があります。
 景色がいい、写真の構図として面白い物があるなど、見る写す何かがある事です。
 次に登山道から近い場所であり、崖の上に位置しているが割と安全と思われる場所。

  崖の下に落ちるので、滑落痕などが残りにくい場合がある。
 また、ヘリや地上からの捜索でも発見しにくい形になっている場合も多い。

  恵山の場合は、Aは噴気孔など活火山である恵山の息吹を見る事が出来るし、
 BCではとても美しい風景や崖の様子を見ようと思う場合もあるかもしれない。
 いずれも登山道と崖が接近している場所になります。
 記念撮影した山頂も候補地ですが、下山中に行方不明になっている今回は当てはまりません。


  ②水路道迷い遭難:水路(みずみち)とは、雨水が流れたことによりつくられた路のことです。
  登山道が雨どいのような役割を果たしている場所にできやすい。
  登山道から自然に流れるように造られているので、登山道と間違えて下りやすくなります。

  水路を見つけるのは、とても簡単です。
 雨を受けやすく流れやすいように登山道が斜めに走っていて、距離も長めである。
 または上に雨を貯めやすい地形がある。
 以上の地形になる登山道がヘヤピンに近い形で曲がっている場所の下に水路は出来ます。 

  恵山の地形図を見ると、Dがその該当箇所になります。
 Dの箇所には谷状になっている場所があるので、水が流れている事は間違いないと思われます。

  他の遭難場所とは違い、見通しがいい事や間違えて下ったとしてもそこにも登山道がある為、
 恵山の場合に遭難につながる事は少ないと思います。あるとしたら、道迷いからの滑落です。


  ③ショートカット遭難:ショートカットとは、近道をする為に本来の登山道を外れる事です。

  この遭難が起きやすい場所や条件は、次の通りになります。

 【必須】まず本来の登山道が明瞭かつコースがはっきりしている事。
 【必須】次に目的地と反対側に進む、遠回りをする登山道になっており、
     その区間の距離や時間が長くかかりそうな事。
 【ほぼここから】反対側に進む・遠回りが始まる起点がしっかりしている事。

  恵山の場合は、Eがその場所になります。
 しかし、ここからショートカットをしても、行方不明になるだろうか?という場所です。


 現地検証の結果:①②③のいずれの遭難が起きても、発見されないという可能性は、
 極めて低い事が判った。結論として、①②③の場所からの遭難はない。



検証2 恵山 権現堂コースを調査する
検証1で仮定した遭難パターンは、どれも当てはまらない可能性が高かった。
この権現堂コースで他に遭難するパターンは見つけられるのだろうか?

恵山の権現堂コースのイメージ

  こちらが恵山の登山道になります。
 とても明瞭な道が続いており、道迷いから行方不明になる可能性は極めて低い


  道迷いを遭難の理由から外すと、次の可能性が浮かび上がります。

 1.道迷い以外の何らかの理由で、自分の意思で登山道を外れて歩いた可能性。
  A:何かに悩んでおり、衝動的に自殺してしまった。
  B:何かを見ようとして登山道を30m以上外れた結果、滑落した。
  C:お姉ちゃん達を驚かそうとして、あるいは何らかの理由で登山道を外れて歩いた。

 2.恵山以外の場所で行方不明になった可能性。
  D:恵山を降りた後、別の場所に行こうとした際に行方不明になった。

 3.第三者による拉致などや家出の可能性
  E:何者かに拉致された。
  F:ヒグマに襲われた。
  G:家出した。

  上記の3つの可能性を一つ一つ検証していくわけですが、
 その前にとても重要な事実に気付きます。
 上記の検証を行う前に、検証3を行う事にしました。


検証3 目撃者がいない謎を調査する。
この登山道を歩いた時に感じた疑問、それはとても単純な事です。
最初のカーブでの目撃を最後に誰にも目撃されていない。
そんな事が可能なのか?という疑問です。

登山者に協力を頂き、先を歩く登山者がどのように見えるのかを実験したイメージ

  歩いてきた登山者にご協力をお願いし、帰り道の後ろ姿を撮影させていただく事にしました。
 果たしてどの程度まで離れても確認できるのでしょうか?

  もちろん、この実験が完ぺきとは思っておりません。
 なぜなら目撃者であるお姉さんと私の身長や視力なども違いますし、
 行方不明者と協力者の身長や服装・幅なども違いますから。

  撮影を許可いただいた方ばかりではなく、捜索隊や一般登山者(ソロやカップル)を含めて、
 5組の方で検証させていただきました。

かなり下の登山道まで見通せる地点のイメージ

  検証の結果として、登山道にある2つのポイントからは、
 かなり離れた登山者でも確認出来る事が判明しました。

かなり離れた登山者でも見つける事が出来るポイントを地形図に書き込んだ物

 検証の結果:星のポイントからは、下に続く登山道のかなりの部分が見渡せる事から、
 この星から最後の目撃地点までの間で行方不明になった可能性が高いと判断しました。

  恵山で行方不明になっている場合、赤枠内での可能性が90%以上だろうと思いました。


検証4 行方不明者の居場所を特定する。

行方不明者が行方不明になった可能性が高いと思われる地点を地形図に書き込んだ物

 検証1の地形図から想定される遭難は、可能性が低い事が判った。
 検証2から道迷いの可能性は低い事、登山道上を普通に歩いて遭難の可能性も低い事から、
 何らかの理由で登山道を外れた事が遭難につながった可能性が極めて高い事が判った。
 検証3から遭難が起こった場所は、★~▲の間の可能性が極めて高い事が判った。

 以上から検証2で可能性が残っていた遭難のパターンを検証します。

 1Aの自殺の可能性と1Bの転落・滑落の可能性についてですが、
 ★~▲の間にある崖については見通しがいい為に、もし人が落ちていたとしても捜索で発見
 できない可能性は極めて低いのではないかと思われる事から、1A・1Bとも無いと思われます。

 2Dの恵山から下りた後にどこかに行こうとして行方不明になった可能性、3Eの拉致の可能性、
 3Fのヒグマに襲われた可能性、3Gの家出の可能性についても、
 登山道以外の場所から下りる事は不可能に近いため、星のポイントで目撃される可能性が高く、
 ヒグマの可能性についても痕跡などを残さずに人をさらう事は不可能だと思います。
 家出の可能性についても、ここからのアクセスが限られるために、自家用車を持つ第三者や
 自転車等をデポしておくなどしないと、人知れずここから遠くに行く事は不可能だと思います。。
 家出をするなら、自宅に戻ってからの方がいいように思います。

  残る可能性は、1Cのお姉ちゃんを驚かす為や何かの理由で登山道を外れた可能性ですが、
 崖の下に落ちている可能性が低い為に、行方不明になる場所がかなり限定されます。
 残された場所は、地形図の赤丸内と赤枠内になります。

  特に可能性が高いのが、赤丸内だと思います。
 個人的には、100%間違いないと確信しております。


検証5 赤丸内を捜索する。
間違いないという確信の元、赤丸内の捜索を開始しました。
しかし、捜索を始めてまもなく打ち切る事にしました。

行方不明者がいると思われる岩場のイメージ

  こちらが赤丸内にある岩場の様子になります。
 例えるなら、漁港などにあるかなりの年月を経た古いテトラポットの上にいるような感じでした。
 至る所に穴が開いており、岩ははがれやすく、フジツボのような鋭い凸凹が一杯ある。

行方不明者がいると思われる岩場からも火山ガスは噴き出ている。

  こちらも赤丸内の岩場の様子になります。中央上側に火山性ガスの噴き出し口が見えます。
 恵山は活火山なので、山肌の至る所からガスが噴き出しております。
 この日は風が弱くなる時間があり、このような窪地にはガスがたまる可能性があり、
 とても危険な感じがしました。

  
行方不明者がいなくなったと思われる地点にあるクラック

  赤丸内にある岩場のクラックの様子です。
 かなり大きな割目も多いのですが、この程度の隙間があれば人間を飲み込めます。
 内部は複雑になっている場合が多いので、どのように落ちるのか想像がつきません。

  こんな場所に落ちるだろうかと思われる方も多いと思いますが、滑落遭難された皆さんも
 ここは大丈夫だろうと思っている場所で落ちている方が多いのです。

  内部を確認するには、ライト付きのカメラなどを入れるしか方法はないかもしれません。

砂場には足跡が残されていた。

  所々にある砂場には、しっかりと足跡が残されていました。
 もちろん捜索隊の足跡と思われますが、初期の段階ではこのような足跡から発見に至る事も
 少なくありません。特に靴底にある溝のパターンはシューズによって違うので、もし行方不明者の
 シューズが判れば手がかりになる可能性もあります。

足元の砂がザーという音とともに穴に吸い込まれていった。

  今回岩場の捜索を止めた理由、それがこの踏み抜きになります。
 突然足元の砂が崩れ、ザーという音とともに穴に吸い込まれていきました。
 中に空洞ができており、その上にかろうじて砂が乗っているという感じでした。

  雪渓などでも内部の雪が解けて空洞になり、一見するとしっかりしているようにみえますが、
 実は乗ると落とし穴のようになることがあります。
 この時は、脚が震えました。早々に撤退する事に決めました。

  私が穴に落ちたとしても、恐らく見つかる事はなかったでしょう。

  検証結果から、ほぼクラックに落ちている事は間違いないので、あとはどのように捜索するか?
 という事になります。この岩場の捜索には、かなりの専門性が必要になります。

 ★火山ガスに対する対策
 ★転落・滑落に対する対策
 ★クラック内部を捜索する対策

 以上3点をクリアできれば、早々に発見されると確信しております。

  一日も早く、行方不明の高校生が見つかることを祈っております。

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